放蕩記

科学ライター荒舩良孝の日記

DMM.make体験

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秋葉原にできたDMM.makeのスタジオに興味があったので、行く機会がないかなと思っていたら、ちょうど、開設0.5周年記念のワークショップをやるという。
 
問い合わせをしてみたら、ちょうど1名空きがあるというので行ってみた。
 
参加したのは3Dスキャナ体験ワークショップ。
最新鋭の3Dスキャナーを使って3Dデータをつくるというものだ。
3Dスキャナという言葉は、何か、FABっぽい、最先端のモノづくりというイメージを醸し出している。
当然、スキャンしたいものを置けばお手軽に3Dデータにしてくれるのではないかと、淡い期待を抱いてしまう。
 
しかし、現実はそんなに甘くない。
 
3Dスキャナには、スキャンできるものと、そうではないものがあるのだ。
具体的にいうと、黒いもの、透明なもの、カラフルなもの、毛羽立っているものなどは、スキャンできないのだ。
 
何だか、いきなり不便な気分になってしまったが、そうなのだ。
なぜ、そういうことが起きるかといえば、3Dスキャナはスキャンしたいものに光を当てて、その反射光の情報を読み取るからだ。光を反射しにくいものはスキャンが難しいというわけだ。
 
私の場合は、黒いものだったり、スキャナが認識しにくいものしかなかったので、ちょうどスタジオにあった化石恐竜のミニチュアをスキャンしてみることにした。
 
実際にスキャンする段になると、また、あの考えが出てくる。
そう、人形を台においてスイッチを入れれば、自動的に3Dデータに変換されるのではないかという、あの考えだ。
 
が、しかし、やはり現実は甘くない。
たくさんのマーカーが書いてある台の上に乗せたところで、何が起きるわけでもない。
ある角度からスキャンをして、回転台を少し回し、またスキャンをする。基本的にこれの繰り返し。
 
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人形を1周回し終えても、画面に現れているのは不完全な像だけだ。
立体物なので、影になってしまったりしてスキャンできない部分も出てくるのだ。
そのときはどうするのかって?
人形を立たせていたとしたら、寝かせたり、向きを変えたりして、再び同じことをする。
それを何度も何度も繰り返し、撮った画像の位置合わせをしていくという、ひたすら地道な作業の繰り返しだ。
そして、位置合わせが終わったら、マーカーなど、余計な情報を消して、スキャンデータは完成する。
 
それでやっと3Dデータを作りあげても、それをすぐに3Dプリンタで出力することはできない。
いや、できることはできるが、もう一手間加えた方がいい。
モデリングソフトなどを使って、データをさらにきれいにすることで、よりきれいな造形物をつくることができる。
 
実情をあまり知らないと、3Dプリンタや3Dスキャナは、ボタン1つで何でもできてしまう魔法の道具のように思ってしまう。実際、そう思っている人も多いだろう。
今回、3Dスキャンの体験をしてみて、どんな方法でも、ものをつくるという行為は、地道でコツコツとした作業を経るものだということがよくわかった。
そのような作業を積み重ねた先に、人を驚かせたり、感動させたりする作品が生まれるんだということを改めて感じた。
 
おしまい。